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【体罰が子どもに与える悪影響】体罰の影響を科学的にわかりやすく解説!

一昔前までは、子どものしつけとして、お尻を叩いたり、げんこつをしたりする光景がよく見られました。

現在、これらの行為は「体罰」とされています。

体罰は、賛否両論ありますが、近年の研究では、教育やしつけの目的をもって行う体罰でも、子どもに大きな悪影響を与えることがわかっています。

そこで、今回は、体罰による子どもへの悪影響について、国内外の研究や調査を踏まえて、なるべく科学的な視点わかりやすく解説していきます。

体罰の定義

まず、体罰の定義を確認しておきましょう。

体罰とは、

「一定の教育目的をもって、子どもに加えられる肉体的苦痛をともなう懲戒のこと。(引用元:デジタル大辞泉)」

を言います。

そのため、「体罰=暴力」ではありませんので、その点には注意しましょう。

体罰が子どもに与える悪影響

現在までのさまざまな研究によって、体罰は子どもに悪影響を与えることがわかっています。

そこで、体罰による悪影響について、実際の調査や研究を踏まえながら、解説していきます。

子どもの”攻撃性”を高める

まず、最初にご紹介したいのが1998年から2005年にかけてアメリカで実施されたテイラーらによる調査です。

この調査では、2461人の子どもが対象となりました。

この研究を通して、月2回以上体罰を行うと、子どもが5歳になったときの攻撃性が高まることがわかりました。(Talor CA et al 2010)

さらに、2006年におこなわれたアメリカの研究では、しつけとして体罰を受けている子どもは暴力行為に走りやすいこともわかっています。(Ohene SA et al 2006)

この調査では、10~15歳の子どもとその親の計134組を対象としました。

その結果、親から体罰を受けて育った子どもたちは、そうでない子どもたちに比べて、人との関わりの中で暴力行為に頼ることを容認する傾向が高いこと、いじめの加害者や被害者となりやすい傾向にあることがわかりました。

これらのことから、体罰は、子どもを攻撃的にする可能性が高いといえます。

脳を萎縮させる

体罰は、子どもを攻撃的にするほかにも、さまざまな悪影響があるとされています。

その一つに「脳の萎縮」があります。

2003年に、医学博士の友田氏やハーバード大学のマーチン・タイチャー氏らが共同で「体罰による脳へのダメージ」を調査しました。

この調査では、18~25歳のアメリカ人男女およそ1,500人に聞き取りを行い、次のような体罰を受けた経験のある23人を選び出しました。

●体罰の内容:頬への平手打ち・ベルト・杖などで尻を叩かれるなど

●体罰を受けた年齢:4~15歳の間

●体罰を受けた相手:両親や養育者

●体罰を受けていた期間:年に12回以上で、3年以上

次に、上記のような体罰を受けた経験のない22人のグループを用意しました。

そして、この両方のグループに対して、MRI(※)VBM法などの手法を用いて、脳の状態を解析し、比較しました。

その結果、厳しい体罰を受けたグループは、そうでないグループに比べて、脳の「前頭前野」の容積が小さくなっていることがわかりました。

この前頭前野は、行動や感情をコントロールする役割がある重要な領野になります。

さらに、集中力や意思決定、共感などに関わる「右前帯状回」も減少していることがわかりました。

また、これらの部分が損なわれると、うつ病の一種である気分障害や、非行を繰り返す素行障害につながることがわかっています。

そのため、体罰は、子どもの脳の重要な部分にダメージを与え、自制心や集中力、共感力などに悪影響を与える危険性があるといえます。

その他の悪影響

他にも、現在に至るまでの研究で、次のような悪影響が報告されています。

●抑うつ状態になりやすい

●両親と否定的な関係を築いてしまいやすい

●IQが低くなる(University of New Hampshire 2009)

このように、体罰は、子どもにさまざまな悪影響を与えることがわかっています。

怒りに任せた体罰は、負のスパイラルに。

体罰が良くない方向に働きやすい要因のひとつは、「怒りで感情がコントロールできなくなっていること」です。

おそらく、ほとんどの方々が、子どもを叩いたり、殴ったりするとき、「怒り任せ」になっているはずです。

また、先程も解説したように、体罰がエスカレートすると、子どももより攻撃的になります。

そうすると、体罰の頻度やレベルも上がっていき、子どもにより悪影響を与えていくといった負のスパイラルに陥ります。

それを示す興味深い研究が一つあります。

2014年、ホールデンらは、33のご家庭で数日間、保護者にレコーダーを身につけてもらい、録音された会話を分析しました。(Holden GW et al 2014)

これらのうち、15の家族で体罰が行われていました。

また、それらの家庭では、言葉で子どもに伝えた後、わずか30秒後に体罰が行われていました。

このことから、これらの家庭での体罰は、意図的・理性的というより、感情的・衝動的に行っているのではないかと分析されています。

さらに驚くことに、体罰を受けた子どもは、その10分後には、また同じ行動を繰り返していたのです。

その結果、何度も体罰を加えることになりました。

つまり、体罰をおこなっている親御さんは、感情をコントロールできず、行っている可能性があるだけでなく、その効果自体も薄いと考えられるのです。

個人的な考察

ここからは、僕の意見を少しお伝えします。

マスメディアなどの影響で、「体罰」と聞くと「悪」と考える方もいらっしゃると思います。

ですが、それだと、大衆や周囲の人に流されて、ブレブレの教育方針になってしまうので、しっかりと「体罰」というものと向き合って、みなさんにお伝えしていきたいと思います。

まず、最初に結論からお伝えすると、僕は個人的に体罰反対です。

その理由を今から説明します。

僕が考える理由は主に3つです。

①子どもに話し合いや交渉といった手段があることを示せない

②脳の萎縮はさまざまな悪影響を与える

③感情をコントロールして体罰を行うことが難しい

では、①~③について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

①子どもに話し合いや交渉という手段があることを示せない

まず、多くの研究が示すように、体罰は子どもを攻撃的にしまいます。

これは研究を持ち出さなくても、単純に考えたらそうなる可能性は高いといえます。

というのも、子どもは、叱られる時に、毎回叩かれたり、蹴られたりしていれば、当然、自分が親になってから同じような叱り方をする可能性が高くなりますよね。

(もちろん、親の身勝手な体罰を受けたご経験がある方の中には、親を反面教師として、体罰はしないと心に決めている方もいらっしゃると思います。)

さらに、体罰をし続けると、その子が人と関わっていくなかで、うまくいかなかったとき、暴力行為に頼ることも多くなってしまいます。

逆に、叱るときに、親が理由をしっかりと説明して納得させたり、親子で話し合ってルールを設けたりするなどの方法をとれば、その子が大人になったとき、同じような叱り方をする可能性は高くなると考えられます。

また、その子が人と関わっていく中で、うまくいかないとき、暴力に頼るのではなく、話し合いや交渉といった手段を選択できるようにもなります。

つまり、親による体罰を含めた叱り方が、子どものなかでの「叱り方」や「対人関係」の土台を作ってしまう可能性が十分にあるのです。

そういった意味で、体罰は避ける必要があると思っています。

②脳の萎縮はさまざまな悪影響を与える

体罰に反対する理由の2つ目は、「脳の萎縮はさまざまな悪影響を与える」ということです。

私達の行動は、すべて「脳」によって決められています。

そして、子どもの頃の脳は、すごくやわらかいんです。

なので、良くも悪くも、ちょっとしたことですぐに影響を受けてしまいます。

先程の研究でも解説したように、体罰による脳への影響は深刻です。

厳しい体罰を受け続けると、感情や行動のコントロールが難しくなったり、集中力が欠けたり、共感力が乏しくなり、人間関係に悪影響を及ぼす危険があります。

そうすると、学校での生活や社会に出たときにも、なんらかの形でマイナスの影響を及ぼす可能性があるのです。

そういった意味でも、体罰には賛成できません。

③感情をコントロールして体罰を行うことが難しい

最後の理由は、「感情をコントロールして体罰を行うことが難しい」ということです。

これは、みなさんに一番お伝えしたいことです。

「子どもを痛めつけたいから」「子どもを殴りたいから」といった理由で、体罰をする保護者はほとんどいないと思います。

どの親御さんも、体罰したくてしているわけではないんですよね。

つまり、先程ご紹介した研究でも示されていたように、コントロールできないくらいの怒りやストレスに達したときに、叩いたり、蹴ったりなどの体罰をしてしまうのです。

ただ、いくらしつけや教育的目的があったとしても、感情にまかせた体罰にプラスの効果はありません。

もし、効果が期待できる体罰があるとすれば、それは「条件付きスパンキング(conditional spanking)」です。

スパンキングとは、「体罰などにおいて、平らな物や平手でお尻を叩くこと」を言います。

※欧米では長い伝統を誇るが、特に子どもへのスパンキングには賛否をめぐって激しい論争が繰り広げられている。

「条件付きスパンキング(conditional spanking)」では、子どもが問題行動を起こしたときに、素手で、怒りなく、お尻に1,2回軽くたたきます。

また、条件付きスパンキングは、語りかけたり、落ち着くまで別の空間で子どもを一人にさせるタイムアウトなど、肉体的体罰以外の穏やかな方法を試した後にのみ行われるものとされています。

実際、人間発達や家族について研究している学者ロバート・ラルセレーレ氏らがしつけや体罰に関連する26の調査を分析した報告では、「条件付きスパンキング」が、他のいくつかの罰し方より一定の効果を示すこともわかっています。(Larzelere et al 2005)

そのため、もし、「条件付きスパンキング」を定義通りにできる、かつ、体罰以外の方法で何度叱っても、子ども問題行動が一向に改善しない場合は、体罰検討の余地があるかもしれません。

ただ、ロバート氏らも、決して、体罰を推奨しているわけではなく、より良い親子の関係を築くには、説得やタイムアウトなど、穏やかな叱り方をすべきだとしています。

つまり、「条件付きスパンキング」は、体罰以外の他の方法を試して、それでも子どもが反抗したときに、最終手段として用いるものとしています。

そのため、繰り返しになりますが、体罰を推奨しているわけではありません。

また、先ほども解説したように、怒りなく、完全に感情をコントロールした状態で、体罰をすることはかなり難しいです。

そのため、ほとんどの親御さんが体罰を叱り方のひとつとして選択するのは危険であると個人的には考えています。

もし、最初から平手打ちなどの体罰をすると、最初は子どもも恐怖に怯えて言うことを聞くかもしれませんが、時間が経つと、また同じ行動を繰り返し、親御さんの体罰はどんどんエスカレートしていく危険があります。

そのため、これらの理由から、ぼくの個人的な意見として、体罰をしつけや教育の一環として用いるのは基本的に反対です。

さいごに

今回は、体罰による影響について、現在までの研究を踏まえて解説してみました。

ぜひ、今回お伝えした点を踏まえて、子どもとの関わり方を見直してみてくださいね!

Taylor CA, Manganello JA, Lee SJ, Rice JC. Mothers’ spanking of 3-year-old children and subsequent risk of children’s aggressive behavior. Pediatrics. 2010 May;125(5):e1057-65.

Ohene SA, Ireland M, McNeely C, Borowsky IW. Parental expectations, physical punishment, and violence among adolescents who score positive on a psychosocial screening test in primary care. Pediatrics. 2006 Feb;117(2):441-7.

University of New Hampshire. “Children Who Are Spanked Have Lower IQs, New Research Finds.” ScienceDaily. ScienceDaily, 25 September 2009.

友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』NHK出版,2017,pp.76-77

Holden GW, Williamson PA, Holland GW. Eavesdropping on the family: a pilot investigation of corporal punishment in the home. J Fam Psychol. 2014 Jun;28(3):401-6

Larzelere, R. E., & **Kuhn, B. R. (2005). Comparing child outcomes of physical punishment and alternative disciplinary tactics: A meta-analysis. Clinical Child and Family Psychology Review, 8, 1-37. (19 citations) doi:10.1007/s10567-005-2340-z [comparison with other meta-analyses through 2016: ADD LINK